身代わりの姫


「ここは、王家の保養所、だな。

だれも来ないし、マットとシーラも夕飯の支度をすると帰る」


「温泉、気持ち良いわ」


そうか、と照れたように笑ったジルに、ドキリした。


「髪を……」

隣に来て、まとめていた髪を、下ろされた。


「濡れてしまうのに……」

そう言うと、桶で頭から温泉のお湯をかけられた。


「ちょっと……何するの?」

ハハハ、と笑って今度はいつの間にか石鹸を泡立て、優しく顔を洗ってくれる。


「鼻、スッキリしてるけど、小さいんだな。
目は、キレイな二重で大きいけど、顔が小さいから、触ると小ぶりだな」


そう言って、またお湯をかけられた。


「も、もう………」


ザバッとお湯を手でジルにかけた。


「ハハハ、元気になったか?

今日は悪かった。フルーには父上もさすがに怒って、大臣の息子と結婚させることになった。

それから、ガストンから昔のことを聞いたって?


怒ってるか?」


「いえ、別に。そういうこともあるだろうと思うけど、側近から聞くと事実だと分かっただけ」



「俺は、お前に港で会ってから、そういうことはしていない」


頷いた。



軽くキスをされて、温泉から上がっていった。


もう、着替えたかな、と思って小屋に戻るともうジルはいなかった。


着替えて外に出ると、馬の手綱をもって、ジルが待っていた。








< 162 / 279 >

この作品をシェア

pagetop