身代わりの姫
「不安?」
思わず聞き返した。
それでいいと思っていたのではないの?
「あぁ。お前は侍女といる時は笑っていた。
花師からも、料理長からも聞いた。
ガストンはよく笑う賢い人だとも言った。
俺は何をしてるんだ、お前のことを何も知らないと気付いた。
俺のことが嫌いか?何か原因があるのか?」
胸の奥が、ギュッとなった。
「あの日、船から出てくるあなたを見たのよ………」
ちょっと考えている様子だったが、思い出したように言った。
「船………ライアンたちと飲み明かした時か………。
あの船は、泊まりに使うことがある。
女を抱いたのではない。
なぜすぐに聞かなかった?」
「聞いてはいけない気がしたのよ。それに………政略結婚だと思ったから」
「俺は………傷つけたんだな。俺がそばにいるのは、嫌なのか?」
なぜ、傷ついた顔をするのか、分からなかった。
「いえ、そんなことはないわ。
あなたと寝ていて起きたときは、とても安心する。
嫌われているのは、私だと思ってました」
手を引いて立たされ、二階に連れて行かれた。