身代わりの姫
隠し階段を降りて外へ出ると、馬車が待っていた。
御者はレオだった。
抱きつく間もなく、馬車に乗り、レオの家に入った。
「レオ、エルザ………」
2人と抱き合う。
「すっかり王太子妃、になったのね。
元気そうで良かったわ」
「ええ………レオもエルザも元気そうで良かった」
久しぶりにエルザのケーキを食べた。
「美味しい」
胡桃が入ったスポンジにクリームと果物が乗っている、あまり甘くないケーキは、昔から好きだった。
笑顔で私を見ていたレオが、真剣な顔になって話し出した。
「アリア、しっかり聞きなさい。
まだ内密だが………
ビチリア国がシュリベルトに圧をかけてきている。
他の国にもだ。
多分、真っ先に狙われるのはバルテモン国だろうな。
軍事力が強いから、介入される前に叩こうとするだろう。
気をつけなさい。
何があっても生きていなさい。
生きていたら、私達がどうにかお前を隠すこともできる、分かったな」
「戦争になる?」
「分からん。まだ国には言うなよ、バルテモン国が動けば戦争を避けられん……辛いだろうが、逃げられる用意もしておきなさい」
逃げる?私が?
そうなった時にどうすることが正しいのか、分からないが、はい、と返事をした。
きっぱりした返事ではなかったからか、レオが表情を伺うような素振りだったので、慌てて笑顔をつくった。
しばらくゆっくりしていたが、そろそろ行こう、と席を立たされた。
「シリルは元気なの?」
「ああ、休暇にはここに来る。結婚もせず、護衛隊の中核になってきておるよ」
「そう、元気なら良かったわ。
レオ、エルザ、今までありがとう。
私は、今、幸せです。
また、いつか会える日まで、お元気で………」
「アリア、あなたも、元気でね」
「アリア、気をつけなさい」
軽く抱き合って、馬車に乗り込んだ。