身代わりの姫
そのまま、私達は、城の部屋に戻った。
テーブルを挟んで座らされた。
「どういうことだ?」
何を聞いているのか、分かる。
「護身用に習っただけです」
「なぜ短剣を持っていた?」
「あなたの様子がおかしかったから………」
「何か聞いているのか?」
「特に何も………」
「短剣を見せてみろ」
黙って短剣を出した。
「見事な装飾、それからこれは、ホルダー。
………刃は、強いな。刃こぼれもない。
そんなものをずっと持っていたとは、驚いた。
なぜ気付いた?」
真剣な目で見てくるジルを見つめ返した。
「鳥が………飛び立ちました」
「訓練を受けたのか?」
「今日、気付いたのは偶然ですわ。
護身用に習っただけで、攻撃するためではありません」
「矢を払ったのは?」
「反射神経が良いのです」
「リリア………俺を殺そうと思ってるのか?」
不安そうに見える。
「いえ、それはありません。
もし、そんなことを頼まれても、実行しません。
私は、愛してるのよ、ジル」
「俺も愛してる。
今日は驚いたが、助けられた」
ホッとしたように見えたジルに聞いた。
「戦争になるの?」
「それはまだ、分からない………城に行ってくる」
立ち上がると急ぎ足で出ていった。