身代わりの姫
カバンから紙と鉛筆を出して、馬車が揺れる中、走り書きをして、書簡箱に入れて鍵をした。
「あなたは、シュリベルトへ行って、これを………王太子に渡してほしいの。
お願い、無事でいて………」
無理やりコゼットのカバンに押し込んだ。
「リリア様、何を?」
コゼットを抱きしめて、首に手で一撃を与えて眠らせた。
ごめんなさい、と呟きながらそっと寝かせて毛布を掛けた。
幌の隙間から御者を覗くと、手綱を持っているのはシリルではなく、シュリベルトの兵士の服を着た別の男だった。
幌を少し開けて、シリルの肩を叩いた。
幌から入ってきたシリルの首を思い切り叩いて気絶させた。
女は不意打ちが強く、男は不意打ちに弱い……
一緒に習ったじゃない?
そう呟いて、後ろの幌から飛び降りた。
毛布だけを持って。