身代わりの姫


飛び降りたのは、まだ港ではなかった。


ただ闇の中である。


ドーン、と砲撃の音が聞こえる。

城は?ジルは?街は?


どうなっているのか分からなかった。


とにかく、ここを離れなければ、見つかってしまう。



1本に編んでいた髪を持って短剣で切ってカバンに入れた。



走ったり歩いて来た道を戻る。

しかし、方角も分からず迷うと言うより知らない国の道を歩いていた。


道が見えるのは、どこか空が明るいからで、それは、もしかしたら、どこか燃えているのかもしれなかった。


軍艦のいる港には、シュリベルトの船はいないはず。


一晩歩いて太陽が見えだして辺りが明るくなってきた頃、まだ距離はありそうだが、海が見える高台に来た。


周りを見回すと、小川があった。

手を洗って、水を飲んだ。

少しだけ入れていた、お菓子も食べた。


さっきより近いところで、ドン、と攻撃の音がする。


どの国の攻撃なのか?


戦争はどうなっているのか?



考えながらも、また、歩き始めた。








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