身代わりの姫


胸の痛みを感じながら、立ち上がった。


「じゃ、王太子殿下、お元気で………

王太子妃は、もう………」

亡くなった、と言おうとして、抱きしめられた。


胸が、痛む。ドクドクと全身が脈打つ。


「やめて、離して………」


もがいても、ジルは離してくれなかった。


「離さない。もう、絶対に………」



体の力が抜けて、涙が溢れる。


その言葉が、嬉しかった。




「王太子妃だから、そう書いただろ?

だから、この国にいると思った。何年かかっても、見つけ出すつもりだった。


王太子の妻は、これからもずっと、お前だけだ」








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