身代わりの姫
あの時、馬車の中で、兄の王太子に当てた手紙。
『私は、王太子妃です。』
だから他国に逃げることはできないと、私の思いをコゼットが届けてくれていた。
ずっと、探してくれた。
もう、会えないと思っていた。
「………なぜ、泣いている?」
「あなたの気持ちが、嬉しかったから………」
「一人で、泣いてきたのか?」
「………ううん、泣かなかった。ここは、楽しいのよ」
「………ここは、夕陽がキレイだな。もう少し、一緒に見ていたい」
ジルが、肩を強く抱いたまま、一緒に砂浜に座った。
これから、王太子妃として生きていくのか、このまま庶民として、生きていくのか。
「俺が、ここにお前を残していくわけがないだろう?」
ジルが言った。