身代わりの姫
「では、王太子妃としてではなく、侍女としてでも連れていくの?」
海を、見たまま呟くように言ったが返事はなかった。
「………この町は、どんな町だ?」
町の人を、友達を思い浮かべた。
「みんな、優しいわ。
漁業が盛んで活気がある。
私が来たときは、瓦礫が多くて、ここにはもう住めないかと思ったけど、復興も町の人達が分担して、行っていました。
意外にも私は力持ちで、復興を手伝ううちに、皆さんに受け入れてもらって、友達もできて、魚の仕分けのお仕事もさせてもらって、楽しく過ごしています。
私のことは、王女でも王太子妃でもなくただの、サリ、として仲良くしてもらっています。
でも、ジルが昨日、病院に来たとみんなが騒いでいて喜んでいました。
私に、王太子妃としてできることは、なにもありません。
ここで、サリとして奉仕活動をすることが、私らしいように思います」