身代わりの姫


「王太子妃としてのお前にしかできないことが、1つだけある。


それだけのために、戻って欲しい」


「それは?」


「………俺を幸せにすることだ」


思わずジルを見ると、困ったような顔になっていた。


「…………俺はお前を幸せにしたい。
俺の隣で笑っていてほしいし、俺は………お前と一緒に幸せになりたい。

ここで幸せだったとしても、お前をここにはおいて帰れない。


………好きな男ができたか?」


思いついたように、それでいて、不安そうに聞いてきた。


「フフフ………あなたよりいい男は、なかなかいないわよ」



座ったまま、きつく抱きしめられた。




私は、この人の胸に抱かれると、こんなにも暖かく感じる………。


「………サリ、一緒に帰ろう」



完全に陽が沈み、段々と暗くなってきた。




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