身代わりの姫
「噂で王家のことを聞くことがあるけど、私がいないことは、聞かないわ。
どうなってるの?」
「東の館の者は分かっているが、全員に口止めしている。
王家の者も知っている。
でも、元々バルテモンでは王太子妃は外での公務はしていなかったから、民には知らせていない。
少し体調が悪かったとでも、なんとでもなる」
抱きしめられたその腕は、緩めてはくれなかった。
「そう………あなたは、どこに泊まっているの?」
「昨日の病院の近くに、と言っても山の中だが、王家の別荘がある。
そこにいる。
お前が帰ると言うまで、俺はこの手を離さない………」
胸が、締め付けられた。
私は…………。