身代わりの姫
「まあ、とりあえず、私はここにしばらくいます。
コラさんから、きっと故郷に帰れずにいるだけだと思いますって言われたから、帰るよう説得しにきた設定でおりますわ。
中身はレオナでも、私は王太子妃の侍女ですから、お忘れなく」
分かったわ、と自分で淹れたお茶を一口飲んだ。
「で?…………何のお仕事だったのですか?」
コゼットはコラに淹れてもらったお茶を飲んで聞いてきた。
「魚の仕分けです。ここは漁業が盛んですから」
丸い目を更に丸くしてコゼットが固まった。
「え?生きた魚を触るのですか?」
「ええ。種類別、大きさ別に分けるの。
魚も捌けるしお料理もできるようになったわ」
「…………あぁ………王太子やマアサ様に、なんて申し上げたら……」
「フフフ……きっと笑うわよ。
まだ、ほら………手に魚のにおいが………嗅いでみる?」
「いえ、結構です。
まぁ、いいですわ。後は何を?」
「お仕事はそれだけよ。
あとは、色んな場所で花を植えたり、学校でピアノを弾いたり、病院で読み聞かせをしたり、清掃活動もしてるわ」
「………ま、それくらいなら………。
とりあえず、私は、あなたを説得しにきた友達と言うことでよろしいですね」
「はいはい、分かりました。
じゃあ、ちょっと外を散歩してみますか?」
「先に、使っておられる部屋を見せてください」
「いいけど………何故?」
「行きましょう、どこですか?」
コゼットがショルダーバッグを持って立ち上がったので、案内して階段を上がった。