身代わりの姫
町を歩くと、すれ違う人が声をかけてくれる。
「サリ?」
後ろから呼び止められた。
1軒の家の前で、犬を連れているリラがいた。
「お疲れ様、また、明日ね」
「ええ、サリ、また食事に行こうね」
手を振ってリラが私がいる場所から反対の方に犬を連れて散歩に行ったらしい。
「お友達ですの?」
「ええ、もうすぐ結婚するから幸せそうなのよ」
結婚の話を愚痴りながらも嬉しそうな表情をするリラを思い出して、ちょっと笑いながら言った。
「へぇ…………あ、ちょっとお買い物をしていくわ」
小さな商店が並ぶ通りで、コゼットが服や貝殻の飾りなど、色々と買っていく。
男性用のこの辺りではよく着ている、前を合わせて腰のところで紐で結ぶ普段着も2着買っている。
「あら、男性用?もしかして、お付き合いしている方が?」
はぁ、とため息をついてコゼットが呆れ顔で私を見た。
「…………その相手が、王太子だったらどうするのです?」
「え?…………そ、うなの?」
驚いて息苦しさの中、なんとか言葉を言った。
ケラケラ笑いながら、そんなわけないですよ、とコゼットが言った。
「そんなにショックをうけるなら、さっさと帰ってきたらいいのに」
そうだわ、もしかしたら、側室ができているかもしれないし、遊び回っているかもしれないのだ。