身代わりの姫
歩きながら、コゼットが言った。
「どうしましょう、馬車で王太子が迎えに来るかもしれません」
「それは、ちょっと………困るわ」
2人で顔を見合わせた。
「じゃあ、お手紙を………書きますか?」
「そうね、1文だけでも………」
バッグの中から鉛筆と紙を出して、町までは迎えに来ないで、と書いた。
「こんなもので、納得されるか分かりませんよ」
知らないですからね、と言いながら、受取った。
「それから、これを国王に………」
封をした手紙を渡した。
ネックレスのお礼と、いなくなった謝罪と、必ず帰る約束の手紙。
「確かに、預かりますね………このまま、一緒に行きませんか?」
微笑んで首を横に振ると、寂しそうに少し笑ってコゼットが言った。
「では、2週間後。楽しみにしています。
もう、ここで結構ですわ。迎えが来るはずですので。
失礼します」
「コゼット、ありがとう。帰ったらまたよろしくね」
はい、と笑顔で返事をして去って行った。