身代わりの姫
何かの気配がする。
部屋を見回したとき、黒い影が動いて、その動きに合わせて隠していたナイフを影に当てながら腕を掴み足を掬った。
「そこまで。流石だね」
ダリアン王子の声がしたが、それでも男を離さずにいると
「うちの兵士だから、大丈夫。
ちょっと腕前の確認をさせてもらったよ」
ナイフの歯を隠しながら立ち上がると兵士も苦笑いしながら立ち上がった。
「まあ、ごめんなさい」
驚きながら言うと、王妃がクスクスと笑った。
「カッコイイわ、驚いたけど」
リリアも王妃の言葉に頷いていた。
兵士は部屋を出ていき、マアサが言った。
「合格ですわね」
「また、来週から本格的によろしく頼むよ」
王に膝を折り、忠誠を誓うポーズをとった。
そこへマアサがお茶を運んできて、最初で最後であろう、家族揃って、お茶を飲んだ。
そこで、侍女としての私の名前は、レオナ、に決まった。
「3日間ゆっくりしてくるといい」
そう言われ、ティタイムのあと王宮を離れた。
夕方、養成所に戻り、これから3日間の休暇を考える。
シリルは、休みにはならないのか?
久しぶりにゆっくりすると、シリルを思い出していた。