身代わりの姫
入ってきたのはデジだった。
「おかえり、デジ」
穏やかにコラが話しかけた。
「ただいま………おはよう、サリ」
「おはよう、散歩?」
デジがクリッとした目を一瞬上に上げてから言った。
「そう。一座の様子を見てきたの。ショーをしてたテントはもう片付けられてて、今は朝の支度しながら荷物をまとめていたわ」
なぜ?と思いながらデジを見ていると続けて話しだした。
「あの、男の踊り子さんが格好良くて、最後に一目見に行ってきたのよ。
で、別の踊り子さんと付き合ってることを知ってきたのよ」
最後はヤケになったような話し方に、私もコラも固まった。
「えっと………………フラれたの?」
「うるさいわ、サリ。いえ、違うわ。ちょっと………あー、知りたくなかったわ、もう!」
そう言って、階段を上がって行った。
コラと目が合うとプッと吹き出した。
「修行ね」
「そうね、修行させなきゃならないわね」
やっぱりまだまだ若い女の子だな、と思いながらデジが上っていった階段を見つめた。