身代わりの姫


夕食後、ソファーで肩を抱かれながらジルの話を聞いていた。


「俺は、お前を見つけるまで、探すことにしか集中出来なかった。

何かあったらと、ただただ不安だった。


でも、何故か、どこかにいるはずだと、妙な勘も働いていた。


どこにも行くな。ずっと俺のそばにいてほしい」



わがままで快闊で強引な王子が、不安を抱えていたなんて、想像できない。



「ジル、あなたの隣に私がいるわ、これからは、ずっと………」




秋の夜は、少し寒い。それが心地良いくらい、私の心も体も熱かった。




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