身代わりの姫


抱きかかえられたまま、寝室のベッドにそっと下ろされた。


コゼットは気を利かせて部屋には入らなかった。



「本当に大丈夫なのか?」

心配そうにジルが聞いてくる。

「本当に大丈夫よ」


「何か悪いのか?風邪か?」


「違うわ」


心配してくれるジルには悪いが、笑顔になってしまう。


「あのね、赤ちゃんができたのよ」


え?と動きが止まったジルにもう一度言った。


「11月には、赤ちゃんが生まれるの」



「………そう、なのか?」


遠慮がちに抱きしめてくれる。


「だから、大丈夫なのよ」


そうか、そうなんだな、と手を離したジルの顔は、笑顔だった。



ありがとう、そう言って、甘いキスを受けた。




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