身代わりの姫
第2章
1
月曜日、朝。
「レオ、エルザ、また帰ってくるけど、今日からは任務に就くわ、今までありがとう」
二人と抱きしめ合う。
私を養育してくれたのは、この二人なのだ。
また、任務に就けるよう訓練をしてくれた。
その感謝の気持ちは、隠せない。
「アリア、あなたの家はここよ?
用事がないときは帰ってくるのでしょ?
遠慮しなくていいから、待ってるわ。
あなたは、私達の娘よ。自信を持ちなさい」
「うん、ありがとう。行ってきます」
夏とは言え、まだ涼しい空気の中、レオと馬車に乗り込み、王宮の近くで降ろしてもらう。
レオは王宮で仕事らしい。
一人で非常階段を上がり、部屋で着替えた。
特別に誂えたドレス。
華やかではないが、女性護衛員としての制服でもある。
薄い黄色のブラウスに紺のふんわりとしたロングスカート。
太いベルトには短剣やワイヤーなどが隠されている。
それを確認しながら、待っていると、マアサが来て、特殊な髪飾りを着けた。
後頭部を覆うティアラのようなものを着け、その端に顔の下半分を覆う白い布を取り付けた。
これで、アイメイクと眉の形を王女と変えていれば、影武者とは気付かれず、女性護衛員として認識されるだろう。
私が影武者になっている時も、この格好で他の者が付き添えば不自然ではない。
今日からはその格好で王女の側に付き添い、時に、入れ替わることもある。
慣れたら、私もやりやすくなるだろう。
「さあ、会議という、顔合わせですよ、行きましょう」
「はい」
と返事をして、表情を無くした。