身代わりの姫
医師が王妃の部屋のドアをノックすると、侍女のマアサがドアを開けた。
王妃は一人掛けの肘掛け椅子に座って、大きくなった腹を撫でていた。
「体調はいかがですか?
お腹のお子はお元気でですよ。
しっかりと栄養をとって、体の調子に合わせた生活を。
きっと眠くなるかと思いますが、無理をなさらずに」
「ありがとう御座います。
動くとすぐにつかれるのですが、特に痛むこともありませんわ」
穏やかに王妃が言った。
「それは、良うございます。
ところで、王妃の身の回りの世話をされる方の中で最も信頼出来る方は?」
「今もおりました、侍女のマアサですわ。
それが、何か?」
「今後のことも含めまして、後でお話をさせていただきたいのです」
医師は、穏やかに、これから出産を控えた話であることを伝えた。
「では、いつでもお連れください。
私は少し散歩でもしようかと……」
「適度に体を動かすことは、お子様にも、王妃様のお体にも良いことです。
無理はされないように」
しばらく話をして、マアサではない侍女を連れて、王妃が部屋を出て行った。