身代わりの姫


医師が、控えの間でマアサと王を待っていると、王の従兄弟のレオと側近の二人と神父を従えてきた。


「待たせたな。用件を聞こうか」


テーブルセットの椅子に座り、医師にも座るよう促しながら王が言った。

「お時間を頂き、ありがとう御座います。
確認ですが、これから私が話すことは、一生他言無用ですが、よろしいですか?」

全員が頷いた。



「王妃は、お腹に二人のお子を宿していらっしゃるのです」

全員が、言葉を失った。

シュリベルト王家では、双子は男でも女でも宜しくないとされる。
跡目争いや、後の人生に禍根が残るからである。


「………そうか」

王が呟き、医師が続ける。

「今、ここにいる者だけで、二人目を取り上げなければなりません。
私の助手がもう一人加わることになりますが、よろしいですね?

お腹に残すことはできませんから」


一つため息をついて、王が、言った。


「……王家に双子はあってはならない。
後に生まれた子は、捨てる決まりだ。

レオ、お前の家の前に捨てる。
育ててやってくれ」


「分かりました」


レオの言葉に頷いた王が、医師に言った。


「王妃の体は?」

「特に問題もなく、お子も順調にそだっておられます」

「そうか」

王は安堵の表情を一瞬見せてから目線を落として言った。


「双子のことは、内密に頼む。
王妃には、私から話そう………もう少し、先に」




王のその言葉を最後に、全員が頭を下げ、王を先頭に部屋から出て行った。








< 4 / 279 >

この作品をシェア

pagetop