身代わりの姫
4
王女の影武者になって2年が経った。
私とリリアは先日20歳になった。
リリアから休みをもらい、レオの家に帰っていつものように剣を振り汗をかいてから、馬を走らせ温泉に入り、池の畔の大きな岩に凭れてじっと池に浮かぶ緑の葉っぱを見ていた。
近付く馬の足音に顔を向けると、シリルが馬に乗って、私を見ていた。
時折、王宮で見かけることもあるが、近くで見るのは2年ぶりだった。
少し、胸の奥が痛むが、何でもないような顔で話しかけた。
「シリル、久しぶりね。休暇なの?」
じっと、目の奥を覗くように見つめられたが、怯まなかった。
「………久しぶりだな。休暇だよ」
そう言って馬小屋に入って行った。
馬を置いて出て来ると、私の隣に自然に座った。
「元気そうだな?」
「うん、シリルも元気そうね」
ああ、とちょっと笑って言ったシリルがゴロンと寝転んだ。
「任務は忙しいのか?」
「まあまあよ。休暇でここに帰っても会わなかったわね、時々帰って来てるの?」
「そうだな、時々、だな」
シリルは寝てしまったのか、と思うほど動かなかった。
この国の夏はカラリとした暑さだが、木陰と池の近くというこの場所は、涼しくて気持ち良い。