身代わりの姫
「アリア?」
突然呼ばれた名前に振り向くと、座ったままシリルに抱きしめられた。
「お前の任務は聞かない。
だが、この先、国にとって大変な事が起こるかもしれない。
どこで、どんな任務をしていても、気を付けろよ。
まあ、何も起こらなければ、いいけどな?
これは、俺の勘、だから、何の根拠もないさ」
「それって………」
私の任務が分かって言ってる?
そう聞きたかったけど、聞けなかった。
「じゃあな。今日は泊まるんだろ?
晩飯は一緒だな」
何も言わず、立ち上がって歩いて行くシリルを見ていたが、その姿が馬小屋に消えると、池に、視線を戻した。
池の表面に映る、木漏れ日は、夏の日差しでキラキラしていた。
馬小屋から馬に乗って、現れたシリルが私の後ろで止まった。
「アリア、これをやるよ。最初で最後のプレゼントだ」
投げられた小さな箱を受け取ると、シリルは走り去った。
箱を開けると、中には細い金の鎖にキレイな金属の飾りが幾つかぶら下がりその中に赤い石とキラキラ光る水晶が金の細いチェーンに編み込まれるように入った、キーホルダーのような物だった。
何を思って選んでくれたのか、胸が熱くなった。