身代わりの姫


「ついてくるな」

ジルベール王太子が、周りの護衛隊や兵士にはっきりと言ったため、誰もついてこない中、引っ張られて船の先が見えるところまで来た。


「この船の中は、小さな城の内部と同じなんですよ。
長距離の移動でもあまり揺れない、快適な船旅ができます。

攻撃もできますが、それが本来の目的の船ではありません。

軍艦ならもっと大きな船もあります。


私は、あなたを見に来たのですよ」


は?


と思わず顔を見ると、大きな力強い目が私を見ていた。


「では、攻撃したのは?」


「被害がないよう、堤防をちょっと……」


何を考えているの……?腹が立った。


「本当ですか?」


「いや、それは私の勝手な言い分ですので内密に。
国としては、攻撃した理由はもう伝えてありますから。

近いうちに、またお会いしましょう」


ハハハ……と笑って、私の手を自分の腕に勝手に回して紳士のように歩いて、ダリアンのところに戻った。



ダリアンと護衛隊がホッとした表情に変わり
「では」
と言ったジルベール王子に頭を下げ、歩き去るバルテモン国の人たちを見送ってから、馬車に乗り込んだ。






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