身代わりの姫
翌朝、リリアの部屋へ行くと、リリアは机に向かい、書類に目を通していたが、私を見て微笑んだ。
「レオナ、おはよう。
昨日は、ごめんなさいね」
「体調はよろしいですか?」
「ええ、大丈夫よ。
今日の午後から明日まで休暇をとっていいわ。
明後日の朝にはここへ来てね。
おじ様のところに帰る?」
「はい。でも、ついこの前も休暇を頂きましたが……」
「まだしばらく忙しいけど、私の仕事はあまりないのよ。
お父様やお兄様、軍はまだ忙しいみたいだけどね。
今もジルベール王太子の出航に見送りに行ってるわ。
それが落ち着いたら、また視察や、慰問も始まるから、今のうちに休んでおいて?
そうだ、今から、果樹園に行かない?」
「行きましょうか」
急な提案に驚いたが、今は、バルテモン国の関係のことで、王女がすることは無いのだろう。
書類にサインをすることくらいで、私の出番もないってことか、納得して準備に取りかかった。
リリアにつばの広い帽子を用意して、念のため、護衛隊に果樹園に行くことを、伝えて、後宮のホールから庭に出て、少し秋らしくなってきた庭を歩いた。