身代わりの姫


果樹園では、色々な果物がとれる。

爽やかな気候のシュリベルト国では、農作物も豊富で、いつでも美味しく食べられるものがあることは、私達には当たり前のことになっている。


付いてきていた護衛隊員が、ブドウを見つけ、知らせてくれる。

高いところになっているブドウは濃い紫になっている物がたくさんある。

台を用意してきた護衛隊員に、リリアが声をかけた。


「私が……」

全員が唖然とする中、王女が台に乗って腕を伸ばして、ハサミで切った。

かごを持っている護衛隊員が近付くと、そのかごに次々とブドウを入れていく。


王女は楽しいのか、たくさんあるのね、とブドウ狩りを次々としていた。


5つのカゴが山盛りになり、ブドウ狩りを止めて、王女が振り返った。

「あと一つ、レオナ、あなたもとったら?」

「じゃあ、取りますね」

台に乗って腕を伸ばして、ブドウを一房、ハサミで切った。


それを護衛隊が持っているかごに入れると、リリアが笑顔で言った。


「なんだか、たのしいわね。
でも、今日は戻りましょうか?」


頷いて、来た道を戻った。





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