身代わりの姫
後宮のホールの机にかごを置き、王家のそれぞれの護衛隊員を一人ずつ呼び出した。
シリルが王太子の護衛隊員としてやってきた時は、ドキリとしたが、布で隠していない顔の部分では、表情の変化は無かったはずだった。
「果樹園のブドウですわ。
護衛隊の皆さんで食べてくださいね」
労いの意味を込めて、王女がそれぞれの護衛隊員にカゴを1つずつ渡していく。
護衛隊員が嬉しそうな顔で、ありがとうございます、と受け取り、帰っていった。
残りのかごは、少ないものは王家の食事に出すよう指示して厨房に持って行かせた。
最後の1つのかごは、王女の部屋に持っていった。
「ブドウ狩りって意外と楽しいものね。
これはレオ様に渡して下さい。
ご苦労様、休暇に入りなさい」
「ありがとうございます。
養成所でいただきます。
では、明後日に。失礼します」
カゴを手に自室に戻り、カゴを置いてから、コゼットとマアサに挨拶して、王宮を出た。