身代わりの姫
レオの家に着くと、エルザに抱きしめられた。
言葉は、要らなかった。
「一緒に、食事を……」
エルザの言葉に、決して空腹ではないが、レオとエルザと一緒に食事をしたかった。
なんでもない話をしながら、食事をする。
ずっとここで過ごした。
勝手もわかる。
出会いも別れもあった。
色んなことを、教えてもらった。
いつかまた、帰って来れるのか。
軽い食事はすぐに終えて、居間で3人でお酒を飲んだ。
「リリアの最期をお世話になりました」
「………内密、とはいえ、やっぱり辛かった。
シリルも辛そうだった。
幸せになりなさい、アリア。
強く、優しく、誰をも受け入れなさい。
あちらの国では、お前のことはだれも知らないだろう。
どこでも、お前らしく」
レオの言葉に、エルザが付け足すように言った。
「リリア様は、辛いこともあったかもしれない。
でも、私達が育てたあなたは、名前が変わっても、あなたはあなたよ。
会えなくても、名前が変わっても、愛しているわ。
リリア様ではない、アリアだということを忘れないで。
辛いことがあっても、それ以上にきっと幸せがあるわ」
2人は王家のタブーである私を拾い、自分たちの子供として、育ててくれた。
お父さん、お母さんと呼ばなかったし、呼ぶように躾けられたこともない。
いつだって、レオとエルザは両親ではないと教えていたけど、愛情を持って育ててくれたことは、分かる。
もう、会えないかもしれないと、他国へ嫁ぐ意味を、思い知った。