身代わりの姫
「王妃には………」
言いかけると、あら、と笑顔で王妃が言った。
「今日からは、お母様、お父様、お兄様とよんでくれる?もちろん、バルテモン国に行っても、ね?」
急にそう呼ぶことに、抵抗がある。
ニヤリと笑った王太子が、
「ジルベール王子に怪しまれるから、お兄様、と呼ぶのが良いだろう。返事は?」
ちょっと苦笑いしながら言った。
「はい…………お兄様……?」
「よし」
全員で笑った。
「アリアが本当の妹とは思わなかったな。
小さい時に見かけてもリリアとは雰囲気が違ったから……」
「暇があると外で馬に乗ったり、みんなで遊んでましたから。日に焼けて、小汚かったと思います」
「ハハハ……、シリルも一緒だったんだな?」
少し探るような視線を感じた。
初恋だったと、気付いているのかもしれない。
テーブルのお茶を見ながら言った。
「小さい時から一緒に訓練を受けて、王宮に上がるまで一緒に過ごしました」
思い切って王太子の顔を見た。
「彼をよろしくお願いします、お兄様」
「分かってるよ」
困ったように笑いながら、王太子が言った。