身代わりの姫


「王妃には………」

言いかけると、あら、と笑顔で王妃が言った。

「今日からは、お母様、お父様、お兄様とよんでくれる?もちろん、バルテモン国に行っても、ね?」


急にそう呼ぶことに、抵抗がある。

ニヤリと笑った王太子が、

「ジルベール王子に怪しまれるから、お兄様、と呼ぶのが良いだろう。返事は?」


ちょっと苦笑いしながら言った。

「はい…………お兄様……?」


「よし」

全員で笑った。


「アリアが本当の妹とは思わなかったな。
小さい時に見かけてもリリアとは雰囲気が違ったから……」

「暇があると外で馬に乗ったり、みんなで遊んでましたから。日に焼けて、小汚かったと思います」


「ハハハ……、シリルも一緒だったんだな?」


少し探るような視線を感じた。

初恋だったと、気付いているのかもしれない。
テーブルのお茶を見ながら言った。


「小さい時から一緒に訓練を受けて、王宮に上がるまで一緒に過ごしました」

思い切って王太子の顔を見た。

「彼をよろしくお願いします、お兄様」


「分かってるよ」


困ったように笑いながら、王太子が言った。









< 91 / 279 >

この作品をシェア

pagetop