身代わりの姫
「アリア、手を………」
手を差し出すと、王妃が小指につけていた指輪を外して、私の小指に、はめた。
「これは、私の家の指輪です。
私の母から結婚する時に貰い、その母もお祖母様から頂いたものです。
長く母から娘へ、受け継がれてきました。
お持ちなさい」
じっと、銀の指輪を見た。
幅が少しあり、蔦のような植物の模様が細かくついていた。宝石はついていないが、シンプルでキレイな指輪だった。
本当ならリリアが貰うはずだった指輪。
リリアに渡す日を、思い描いていたのではないの?
言葉にはしなかった。
「ありがとうございます、お母様」
「俺からは、これを……」
表に薔薇が彫刻された細い書簡箱。
「鍵はもう一つは俺が持っている。
何かあれば………何か欲しいものがあれば、これで俺に送れば良い」
心配してくれているのだろう。
「ありがとうございます、お兄様」
微笑んで兄を見ると、少し照れたように笑って頷いた。
「わしからはこれを………」
大きな櫛を差し出された。
受け取ると重い。
「これは……?」
「櫛側を持って、この絵の部分を押してみろ」
櫛と反対側から刃が出てきた。
「護身用に持っていきなさい。
アリア、何があっても、生きなさい。
王子は大切にしてくれるだろうし、我々も戦争をするつもりはない。
しかし、何がおこるか、予想はつかないから………お前には、使いこなせるだろう」
「ありがとうございます、お父様………」
そっと刃を閉まった。