身代わりの姫
神殿の隅には松明が焚かれ、あちこちの壁にロウソクが灯され、祭壇の奥のステンドグラスから差し込む光が、幻想的な空間を作り出していた。
音楽をかき消した大きな拍手の中、一礼して前を見ると、なでつけていてもカールしている茶色の髪で黒の軍服にたくさんの勲章をつけた背の高いジルベールがいた。
その目はじっと私に向けられ、少し微笑んでいることが分かる。
ゆっくりと歩き、王の顔を見てから腕を離してジルベールの固くて太い腕に手を添えた。
2人で祭壇のある階段を上り、神官の前で膝をつき、頭を下げた。
祝福を受けて立ち上がり、聖水を2人で一口ずつ飲んだ。
「互いの幸せを補い合うことの、誓いを………」
神官が言うと、ジルベールと向き合い、ベールが上げられた。
顔を上げると、唇に触れるだけのキスをされた。
「ここに、祝福された夫婦と認める」
神官の言葉で、祭壇に一礼して、向きを変え、ドレスの裾の向きを直してもらい、拍手の中ジルベールの腕をとって神殿を出た。
厳かな式は、終わり、神殿のドアの外の控えの間にジルベールと入った。