公園で王子様を拾いました!
考えるのは止めよう。


思い出せない記憶。


会社に帰って確かめたい事があった。


「今日の仕事なんだけど、ゴミ屋敷の清掃は誰に頼まれたの?」


「それが分からないのよ。場所と掃除依頼はファクスで届いたし、お金は先に振り込まれてたからね。」


あの家は誰の持ちものなのだろう。


智哉に聞けば分かるかも知れないが、聞くのが怖いと言う気持ちもあるが、曖昧な記憶を早く取り戻したかった。


自分の力で真実を見つけ、智哉に聞けば良いことなのだが。


双子の兄の真也に会って確かめる事を、智哉は賛成してはくれないだろうと思うし。


真也の事は砂川さんに聞いてみる事にした。


「着替えて、今日は早く寝なさい。明日も仕事あるからね。」

明日は引っ越しを頼まれている。


引っ越しのトラックは専門の人が来てくれるので、荷物の梱包とトラックにその荷物を運ぶ仕事。


引っ越し業者より、うちの会社に頼む方が格安らしいけど。


この仕事は母さんもきついと言っていた。


10年前、父さんの会社が倒産して、この町を出ていくことになったとき、友達とも別れ、学校も変り、家に引きこもり泣いていた毎日。


両親は死物狂いで働き借金を返し、この町に戻り、人材派遣の会社を始めた。


両親には感謝してるから、少しでも両親を助けたいと思う。

今日も智哉の作った夕食を美味しく頂いた。


「風呂入れたから、一緒に入るか。」


入るわけがないでしょ。


「昔は一緒に入ったのにな。」


え、今なんて言ったの。


はっきり聞こえなかったけど。


じゃ、お先にと智哉が先に入って行く。


真実を知りたいのに、真実を知る事がこんなにも怖いのだろう。







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