冷徹社長の容赦ないご愛執
「行ってみよう、君の町に。
 ちょうど観光部門の手を伸ばさせようと思っていたところなんだ。
 今は日本の国が一丸となって、外国人観光客の誘致に力を入れているからな。いろいろと動きやすい時期ではある」

「待ってください、私の地元は本当になにもないところですよ? 会社の利益に繋がるようなものはなにも……」


 私だって、大切な地元が観光客で賑わえばいいと思っているし、実家の旅館だって今以上に繁盛してくれればと願ってやまない。

 だけど、私の故郷は本当に小さな田舎町で、海外の大商社であるEMUAScompanyが引き受けるような大それた名所もなにもない。


「あるじゃないか、新鮮な海の幸が」


 恥ずかしさ半分で、突拍子もない思いつきをどう収めようかと頭を抱えていると、社長はいかにもそれが一番の見所であるかのように、自信たっぷりに断言した。
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