冷徹社長の容赦ないご愛執
「あなたは……っ」


 大人な対応をする社長に向かって、大和が一歩踏み出し歯噛みするように呟く。


「実際のところ、佐織とはどういう……」

「支配人」


 今にも掴みかかりそうな眉を吊り上げた様相の大和を、凛とした女性の声が遮った。

 振り返ると、妹の詩織が社長に対し目礼をして、近づいてきた。


「お取り込み中のところ、申し訳ございません。
 支配人、お問い合わせがあっております。少々よろしいでしょうか」


 女将という肩書きも伊達ではないと思わせるような品のいい所作で、詩織は大和を呼びつける。


「どうぞごゆっくりとお過ごしくださいませ」


 詩織が丁寧に頭を下げると、自分についてくるようにと目線だけで大和に指示したのがわかった。

 一度私に視線を落とした大和は、しぶしぶといった様子で社長に会釈をし、その場から離れる詩織のあとに続いた。
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