冷徹社長の容赦ないご愛執
「そう思ってるのは、お前だけかもしれないぞ」
「だからないですって」
ニヤける口元にお刺身を運ぶ社長の、単なる冷やかしを真に受けるほど、私も単純じゃない。
ただの一過性の話題に乗ることもなく、話を受け流すと、個室の襖の向こうから声がかけられた。
「どうぞ」と返事をすると、襖を開けてきたのは詩織だった。
「失礼いたします」
メインのカニの塩ゆでを二杯持ってきた詩織は、それぞれの前に皿を並べた。
「どうですか? うちの料理はお口に合いましたでしょうか」
「ええ、とても美味しいです。魚介好きの自分には最高の食事ですね」
心からのものだとわかる社長の言葉に、ここの宿泊は間違いではなかったんだとほっとする。
「それはよかったです」
にこりと女将の顔で詩織が微笑みを返すと、いつか聞いたことのある音楽がこもって流れてきた。
社長が懐からスマホを取り出す。
画面を確認するなり、「すまない」と口にしてからお座敷を出てしまった。
「だからないですって」
ニヤける口元にお刺身を運ぶ社長の、単なる冷やかしを真に受けるほど、私も単純じゃない。
ただの一過性の話題に乗ることもなく、話を受け流すと、個室の襖の向こうから声がかけられた。
「どうぞ」と返事をすると、襖を開けてきたのは詩織だった。
「失礼いたします」
メインのカニの塩ゆでを二杯持ってきた詩織は、それぞれの前に皿を並べた。
「どうですか? うちの料理はお口に合いましたでしょうか」
「ええ、とても美味しいです。魚介好きの自分には最高の食事ですね」
心からのものだとわかる社長の言葉に、ここの宿泊は間違いではなかったんだとほっとする。
「それはよかったです」
にこりと女将の顔で詩織が微笑みを返すと、いつか聞いたことのある音楽がこもって流れてきた。
社長が懐からスマホを取り出す。
画面を確認するなり、「すまない」と口にしてからお座敷を出てしまった。