冷徹社長の容赦ないご愛執
「……社長……っ」


 自分でも知らなかった自分の体の感性を知り、熱く興奮する胸からあふれる想いが彼を呼ぶ。

 私のすべてを隈なく発掘していく社長にすがりつくと、彼は狂おし気に私の名前をこぼした。

 互いに溶け合わせるしっとりと濡れた肌。

 想いを確かめ合うように互いを呼び合う。


「俺の名前、呼んで」


 そう言われたとき、私はもう自分がどこにいるのかすらわからなくなっていた。

 ただ彼の熱に浮かされ、どこかへ舞い上がっていきそうな体を必死で繋ぎ止めることに夢中だった。

 『勇征さん』と聞こえた名前が、自分の口から出たものかどうかもおぼろげで、ひたすらに彼にもたらされるたぎるような熱さの中に、溺れてしまっていた。




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