冷徹社長の容赦ないご愛執
ぱくぱくと声を失った口が、金魚のごとく空(クウ)を噛む。
対する社長は、こちらに向き直るように長い脚を組み直し、両手のひらで膝を抱えて小首をかしげた。
「うっかりこぼしたもんな、社長室で」
「な、な、な……」
「久しぶりの日本で、念願の寿司が食えるって思ったら、脳が日本用に切り替わってた」
「ど、ど、ど……」
「しかし、あの狸。俺が日本語わからないって設定をいいことに、舐めたこと口走りやがって」
「せ、せ、せ……」
さらさらと口ずさまれる流暢な日本語。
ジャパニーズピープルがジャパニーズを話している。
こんなに至極当たり前で当然のことに受けた盛大な衝撃は、この先あと半世紀以上は生きていく人生でも、もう二度と味わうことはできないだろう。
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対する社長は、こちらに向き直るように長い脚を組み直し、両手のひらで膝を抱えて小首をかしげた。
「うっかりこぼしたもんな、社長室で」
「な、な、な……」
「久しぶりの日本で、念願の寿司が食えるって思ったら、脳が日本用に切り替わってた」
「ど、ど、ど……」
「しかし、あの狸。俺が日本語わからないって設定をいいことに、舐めたこと口走りやがって」
「せ、せ、せ……」
さらさらと口ずさまれる流暢な日本語。
ジャパニーズピープルがジャパニーズを話している。
こんなに至極当たり前で当然のことに受けた盛大な衝撃は、この先あと半世紀以上は生きていく人生でも、もう二度と味わうことはできないだろう。
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