冷徹社長の容赦ないご愛執
 いつかと同じように黒の短髪は撫でられ爽やかさがうかがえる。

 けれど、モニター越しではない切れそうな目元は、媒介がない分おじ様方を見据えるだけで体を縛りつけてしまっているかのようだ。

 いつもの横柄な態度が、緊張感に塗りつぶされている浅田室長。

 橘社長に歩み寄るなりガチガチに強ばった笑顔で、ぎこちない英語の挨拶をしている。

 それを受ける橘新社長の通った鼻筋は、目元の印象を和らげるように滑らか。

 薄く引かれた唇がこぼす英語に、全体的な固さが中和されていた。

 わずかに光沢感のある濃グレーの細身のスーツを着こなし、澄ましたモデルのように事務的な挨拶をした橘社長に、私も貼り付けた笑顔を浮かべて軽く頭を下げる。


「Hi,Mr.Tachibana.」


 体格が大きい浅田室長よりも、さらに上のほうから見降ろしてくる力強い眼光は、細身でもかなりの威圧感がある。

 モニター越しの印象よりも三割増しで怖い感じがする橘社長に、笑んだ口元は軽く引きつった。
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