占いガール







ー???sideー


「どうしても教えて欲しいんです。お願いします」

玄関先で土下座する俺を冷たく見下ろす彼女の両親。

俺がバカな事をしでかすまでは、この人達も俺に優しく接してくれていたんだ。


この人達から大切な娘を遠ざけてしまったのは、俺。


浅はかで短絡的な俺が犯した罪は重い。


あの時の事を何度だって後悔した。

彼女と別れて、睦美(ムツミ)と付き合っても、何一つ心が埋まることなんてなくて。


彼女の大切さに気付いた時には、彼女は俺の前から姿を消した。


大切に・・・大切にしてきた彼女を酷く傷つけたのは俺。

すり寄ってくる女の子を跳ね退けることもせずに、流されるままに体の関係を持って彼女を裏切った。


どんなに苦しめただろう。

大切すぎて手を出せなかった彼女の代わりに欲だけを吐き出して、俺が手に入れたものは何一つ無かった。

失ったものだけが増えたんだ。


何年経っても、彼女を忘れられずに。

なげやりになり数人の女の子と付き合ってみても、彼女の大きさを思い知るだけだった。



こんな俺に、彼女を求める資格はないって分かってる。

だけど、会いたくて仕方ないんだ。

俺には彼女しかいないから。



「何度来ても同じだ。千尋の居場所は言わない」

おじさんが低い声で言う。


「だったら、この手紙だけでも渡してもらえませんか?」

ポケットから取り出した手紙を差し出す。


「帰りなさい」

おじさんは吊り上げた眉を下げないで俺を見下ろす。


「貴方・・・手紙ぐらい」

と言いかけた彼女の母親は、俺に慈悲の視線を向けてくれる。


「母さん、こいつは千尋を深く傷つけたんだぞ。それなのに、何年も放っておいて今さら会いたいだなんて都合がよすぎるだろう」

おじさんの言うことはもっともだ。


「・・・・・」

おばさんは苦しそうに顔を歪める。


俺がしでかした事は、この家族を苦しめたんだ。

胸が痛んでも、それを口にする資格は俺にはない。



「帰りなさい」

おじさんはそう言うと、俺に背を向けた。

家の中へと入ってしまったおじさんを地面に正座したまま、見送ることしか出来ない。


「・・・受けとるかどうか分からないけど、これは預かっておくわ」

「おばさん」

「貴方を許した訳じゃない。あの子が前に進むために必要だと思ったからよ」

おばさんは俺から手紙を受けとるとそう言って家の中へと入っていった。


俺はジクジク痛む胸を押さえながら、ただその場に居続けた。



ーendー








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