占いガール
「でも、足りなかったら言ってよね」
「うん、ありがとう」
紀伊ちゃんの優しさに胸が温かくなった。
「フフフ、千尋は可愛いな」
「そ、そんな事ないし」
そんな甘い顔して言われると、相手が女の子でも照れちゃうよ紀伊ちゃん。
「相席いいかな?」
そんな声が聞こえて顔を上げると、そこには美丈夫な男の子がいた。
さらりとした焦げ茶の髪の前髪に三本の赤いメッシュが入った彼は、長い睫毛の二重瞼で黒くて大きな瞳の持ち主だった。
100人居たら全員がイケメンだと溜め息を漏らすんじゃないだろうか?
「悪いけど、他の席にいってもらえる?」
紀伊ちゃんは冷たい視線で彼を見る。
明らかに敵意を向けてるのが見てとれた。
紀伊ちゃんが警戒する人だから、あんまりお近づきになっちゃいけなさそうだ。
「どこも一杯なんだよね」
周囲を見渡して肩を竦めた彼は人懐こい笑みを浮かべた。
確かに一杯だけど、この人一人ぐらいなら他の場所でも座れそうだけどなぁ。
だって、三人掛けや二人掛けの女の子達が色めき立ってる。
自分達の所へどうぞ! と言いたげに彼に視線を向けてるし。
「私達の所じゃなくても、喜んで迎えてくれる女の子達が沢山いますよ?」
疑問に思った事を口にする。
ほら、うんうんと頷いてる子が何人も居るよ。
「えぇ~俺、窓際が良いんだよね」
そんなフランクに我が儘言われても困る。
「北本先輩、申し訳ないですが、違う場所に行ってください」
一言一言をゆっくりと言った紀伊ちゃんは、相当キレてる。
この人が北本先輩なんだ。
恋占いをして欲しいって言ってくる女の子から、名前だけは何度か聞いたことがあった。
北本倫太郎(キタモトリンタロウ)三回生で、めちゃくちゃイケメンで、二年連続学祭でミスター青学を取ったらしい。
因みに青学とは、うちの青葉学院大学の略称だ。
来るもの拒まず去るもの追わずの、女ったらしだと、私は認識してる。
まぁ、顔は今、初めて知ったけど。
紀伊ちゃんが頑なに、相席を断る意味が分かったかも。
モテモテの北本先輩と相席なんかした日には、女の子達からの視線は痛いし、変に妬まれても困るしね。
しかし、本当、この人、綺麗な顔してるなぁ。
ぼんやり見てたら、目があった。
あまりのイケメンぷりにドキッとして、慌てて目を逸らす。
危ない危ない、こんな人無視してお昼ご飯食べなきゃ。