占いガール
北本先輩に手を引かれて、大通りまで戻る。
人が多くなってるのは、きっと気のせいじゃない。
お昼近くになって遊びに来た人が増えてるんだろう。
今まで大翔を思うと苦しくて切なくて、どうしようもなかった気持ちが今は清々しい。
これも、きっと北本先輩のおかげだ。
大翔にさよならを言えたのも、北本先輩が側に居てくれたから。
いつもは、ちょっかいをかけられて困ってたけど、今日は本当に助かった。
「北本先輩、ありがとうございました」
素直な気持ちでお礼が言えた。
私って前のバイクの事といい、なんだかんだと北本先輩に助けられてるよね。
「ううん、間に合って良かったよ」
私を見下ろす北本先輩は安心したように笑う。
「お陰で、過去と決別出来ました」
「千尋ちゃんが、いつも変装をしてるのは大翔君のせいかな?」
痛い所をついてくるなぁ、北本先輩。
私の事情に巻き込んでしまったんだから、話してもいいかな。
どうして、変装してない私が分かったのか謎だけどね。
今は、もういいかなって思える。
「そうですね。大翔が浮気した子が占い好きで占いに大翔が自分の運命の人だって猛アタックをしたんです。優しい大翔はその子を無下に出来なくて、なし崩しに体の関係になったんです」
前は口にするもの辛かった話なのに、案外あっさりと話せた。
「それで千尋ちゃんも占いにのめり込んだの?」
「はい。大翔を奪った占いなのに信じずには居られなくなって。バカみたいですよね」
自嘲的に笑った私に北本先輩は首を左右に振った。
「千尋ちゃんは、きっと必死なだけだったんだと思うよ」
必死なだけ・・・そう言われたらそうなのかも。
あの頃は、占いを憎みながらも、それに頼って生きるしかなくて。
ずっと・・・ずっとそれを引きずってきた。
「北本先輩のお陰で胸が軽くなりました」
「良かった。少しでも役に立てて」
「でも、北本先輩はどうしてあの場所が分かったんですか?」
そこは聞いておきたい。
「あ・・・あ、そうそう。たまたま繁華街に遊びに来てたら、涼香に千尋ちゃんを助けてって呼び止められて。それで探してたら拐われてる女の子が居るって通りすがりの人が言ってたから、場所を聞いたんだ」
北本先輩の目がちょっと泳いでたけど、そこは突っ込まないことにした。
本当に、今日は彼のお陰で助かったから。
「そうなんですね」
「あ、うん、そう。急ごうか涼香が待ちくたびれてるから」
「はい、そうですね」
フフフと笑って、北本先輩にてを引かれたまま駆け出した。