占いガール







「お、紀伊ちゃんじゃん」

私達を見つけた澁谷先輩がへらりと笑う。

彼の両隣の女の子達が凄い顔で睨んでくるんですけど。


別に澁谷先輩には用なんてないのに。

そんな風に睨まれたら、気分悪いよね。


「澁谷先輩に用はないので、話しかけないでください。隣の女の子達から凄い顔で睨まれてるんで」

わぉ、紀伊ちゃん、いきなり飛ばすなぁ。


「・・・なっ」

「なんなのこの子」

二人の女の子は真っ赤な顔で怒りだす。


「普通の四大生ですけど」

わ~笑ってない目で微笑んでるよ。

紀伊ちゃん強者だよぉ。


「ちょ、ちょっと私達先輩よ。口の聞き方がなってないんじゃないの?」

そんなこと言ったら、倍返しされるのになぁ。


「先輩って言っても2歳年上ってだけですよね?」

紀伊ちゃんは負けない子なんだよ。

そして、口では紀伊ちゃんに勝てないと思う。


「な、なんなのこの子。澁谷くぅ~ん」

澁谷先輩に助けを求める女の子。

もうあからさまな甘え方に笑えてくる。


「まぁまぁ落ち着いて」

笑顔の澁谷先輩の瞳を観察してみると、紀伊ちゃんの言うように笑ってなかった。

なんだか、女の子を見下してるというか、軽く見てると言うか、そんな感じ。


「千景、さっさと済ましちゃお」

「あ、うん、そうだね」

澁谷先輩の観察とかしてる場合じゃなかった。

北本先輩に視線を向ける。


「千尋ちゃん、俺に用かな?」

北本先輩は優しく微笑んでくれる。


「あ、はい。少しお時間良いですか?」

こんな人目のある所は早く退散しないと。


「うん、いくらでも時間あるよ」

「あ、じゃあ、空いてる講義室でお話ししたいです」

「講義室より良いところ知ってるから、ついてきて」

ね? と言われて、こちらがお願いしてるんだし、北本先輩に従った方がいいよね。


「・・・はい」

紀伊ちゃんをチラッと見たら頷いてくれたので、返事した。


「慧、今日はここでばいばい」

行こ、っと私達に声をかけて歩き出した北本先輩。


「えっ! 俺も行きたい」

やっぱり言うと思ってました、澁谷先輩。


「慧はその子達と遊ぶ約束してたでしょ? だからダメ」

澁谷先輩を振り返った北本先輩は悪戯っ子みたいに笑った。


「そ、そんなぁ~」

情けない声を出した澁谷先輩を放置して私達は先へと進んだ。




< 64 / 100 >

この作品をシェア

pagetop