占いガール









「で、本当に美少女か」

店長、しつこい。

まぁ、南ちゃんには俺を諦めて貰わないといけないから、ちょうど良いや。


「そうですね。かなりの美少女ですよ」

中々お目にかかれないぐらいのね。


「うわ、こいつノロけてやがる」

「自分で聞いといてその言いぐさですか」

店長の言い種に呆れて溜め息が出た。


「なんだか、青春ですよね。大学生に戻りた~い。ね、南」

真弓さんは笑って南ちゃんに同意を求める。

「そ、そうね。羨ましい」

南ちゃんは必死に動揺を隠そうとしてる。

ごめんね、同意の一回だと思ってたんだけど・・・。


千尋ちゃんと出会った俺は変わったんだ。

昔のようにバカをしないって誓ってるんだよね。


「そんな美少女なら一回連れてこいよ」

「嫌ですよ。店長なんかに会わせたくない」

千尋ちゃんが穢れる。


「おま、店長に向かってそんなこと言うのかよ」

店長が爆笑する。


「無理無理店長。こいつ、千尋ちゃんが相手だと心狭男(ココセマオ)になるんだよ」

注文を取り終えた慧が戻ってきて参戦する。

面倒なやつが増えた。

心狭男ってなんだよ。


「煩い慧。黙ってて」

キッと睨んだ俺を無視して慧は続ける。


「美少女の親友がこれまた美女。二人はそこに居るだけで絵になりますよ」

と。

本当、マジでウザい、慧。


「マジか! 本気で連れてこいよ」

興味津々な40歳の店長。


「あ~それは難しいかも。前に一回誘ったけど、未成年だからってけんもほろろに断られました」

シュンとした振りをする慧。

「慧君、可哀想。だったらお姉さんが付き合ってあげる。今日は呑も。一杯奢る」

真弓さんが大袈裟に嘆いた振りをしてグラスを掲げた。


「さっすが、真弓さん。アザース」

慧はニシシと笑って、自分の分のグラスを用意し始める。


「真弓ちゃん、俺は」

店長も乗っかってく。


「店長は私が奢るわよ」

俺に挑戦的に微笑みながらそう言う南ちゃん。

そんな事しても、俺はヤキモチなんて妬かないのにね。


「お、南ちゃん、サンキュ。慧、俺にもジントニック」

「了解」

店長と慧のやり取りを見ながら、俺は作り終えたお酒を隣のカップルへと差し出した。


「お待たせしました。モスコミュールです」

4人のやり取りは全く気にかけない様子で。


俺の頭の中は、明日会える千尋ちゃんで一杯だからね。




ーendー





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