占いガール
「ちょ、ちょっと私を無視するのは止めて」
彼女は追い縋るような目で北本先輩を見つめている。
「金輪際、俺にも千尋ちゃんに近づかないでくださいね。もし、彼女に何かしたら、それ相応の報復を覚悟してください。今の俺は、守りたい相手を間違えたりしないんで」
北本先輩は突き放すような口調で彼女にそう告げると、私の手をとって歩き出す。
「・・・り、倫太郎」
弱々しく北本先輩を呼ぶ彼女の声に、北本先輩が振り返ることはもう無かった。
呆然と立ち尽くす彼女は、きっとここまでの拒絶を北本先輩にされるとは思ってなかったんだと思う。
なんとも言えない空気のまま、私達は会話もなくボーリング場を後にして、近くの公園にやって来た。
北本先輩はバツが悪そうに眉を下げたまま私に向かって頭を下げた。
「俺の過去に巻き込んで本当ごめんね。千尋ちゃん」
「あ・・・はい」
「聞いたかも知れないけど彼女とは、中学生の頃にカテキョとして知り合った」
「・・・はい」
「ヤりたい盛りの中学生の俺は彼女に色々とお世話になってた。高校に入って彼女とは縁遠くなり、つい一年前ぐらいに再会して、お互いに都合のいい時に遊ぶような関係になったんだ」
北本先輩の話に、なんとも言えない思いが競り上がってくる。
「・・・・・」
「バカをやってた自分に心底腹が立つよ。こんな風に千尋ちゃんに迷惑をかけるなんて」
本気で悔やんでる北本先輩は眉を下げたままだ。
「・・・別にいいですよ。気にしてないので」
変な絡まれ方はしたけど、実害があったわけでもないし。
「そっか・・・そうだよな。千尋ちゃんは気になんないよな」
寂しそうに笑った北本先輩に胸が苦しくなった。
「きちんとお別れはしたんですよね?」
あんな風に絡んでくるぐらいだから、きっと彼女は納得してないだろうけど。
「電話でもう会わないことは伝えたよ。俺達はそんな関係だったし。恵子さんも納得してくれたはずなんだけどね」
「さっきの様子だと納得してくれてないみたいですよ」
「あんなに俺に執着してるとは思ってなかったんだけどね」
北本先輩はやるせない気持ちを隠すように、頭をかいて笑う。
「お互いの都合のいい時に、お互いを利用し合うそんな関係だと思ってたのに、彼女はそうじゃなかったんだろうね」
北本先輩は彼女が自分と同じ様に割りきった遊びをしていたんだと信じてたみたいだ。
彼女は、きっと上手く自分を隠して北本先輩と接してたんじゃないかな。
北本先輩の側に居たくて。