占いガール
「だったら、行ってくれば? 無様に愛を叫ぶぐらいの覚悟でさ」
ポンと慧が肩を叩く。
俺はそれに触発されるように動き出す。
「だな。何度でも伝えてやる。なりふり構わずに」
そう言いながら教室を飛び出した。
彼女が、振り向いてくれるまで、何度でも思いを伝える。
誰に笑われたって、彼女が俺を見てくれるなら。
慧に気付かされたのは、ちょっとムカつくけど。
今回だけは感謝してやる。
千尋ちゃんに向かって駆け出した俺は、憑き物が落ちたように清々しい顔をしていたんだと、後で噂が広がったのは俺の知るところじゃなかった。
「千尋ちゃん!」
大学構内を駆け回って、やっと見つけた彼女は紀伊ちゃんと一緒に屋外のベンチに座っていた。
突然自分の名前を叫んで駆け寄っていく俺に、彼女が目を丸めてる。
あぁ、そんな顔も可愛すぎる。
何日か会わなかっただけなのに、千尋ちゃんが可愛さを増してる気がするよ。
千尋ちゃんの隣では迷惑そうな顔で俺を見てる紀伊ちゃんがいて。
周囲の学生たちも何事か? と事の成り行きを興味津々で見ていた。
「千尋ちゃん」
彼女の前に立ち、もう一度彼女の名前を呼んだ。
「・・・なんですか?」
千尋ちゃんは不思議そうに俺を見る。
「騒がしい人ね」
紀伊ちゃんは呆れ顔だ。
通常運転の二人に安心しながらも、上がった息を整える。
そして、まっすぐに千尋ちゃんだけを見つめた。
「千尋ちゃん、君が誰よりも好きだ。恵子さんにもきちんと君が好きで仕方ないと話した。だから、どうか、俺と付き合ってください」
一気に捲し立てるようにそう叫んで、頭を下げて右手を差し出した。
「「「キャー!」」」
と上がる周囲の女の子達からの悲鳴。
見世物の様に、俺たちを遠巻きに見据える生徒達。
「・・・・・」
千尋ちゃんは突然の俺の行動に、唖然としたまま俺の差し出した手を見つめてる。
「はぁ・・・なんて男なの。とうとう仕出かした」
紀伊ちゃんが呆れと困惑に満ちた表情で、首を左右に振った。
俺の本気を千尋ちゃんに、知ってもらいたい。
今の俺が君だけしか見えてないことも、分かって欲しい。
そして、彼女の隣に居られる権利を与えてもらいたいんだ。
どうか、お願いだ。
俺の手を取ってくれ。
ーendー