世界できっと、キミだけが
「とりあえず、場所を変えよう。キミたちも、状況を聞きたいからついてきてくれるかい?」
「はい…。え、もしかして警察の人ですか?」
「いや、警察ってわけじゃないんだけど。警護の仕事をしているんで、警察ともパイプがあってね」
巻き込んでしまった。
二人を巻き込みたくはなかったのに。
「紗千さん、大丈夫かい?一度病院に寄ってからにしよう」
「いえ。大丈夫です」
これ以上、余計な心配を誰にもかけたくない。
最近、怪我ばかりでお父さんを心配させてばっかりだもの。
「わかった。じゃあ、もしきつくなったりしたら言うんだ。いいね」
「はい」
「男は、吉沢が警察に引き渡してくれているから安心して」
そう言われ、私は静かに頷いた。
竜…。
どうしていないの。
助けて、くれないの?
文句なんて言えない。
だって、私だって言ってなかったんだもの。
竜は、なにも知らなかったんだから。
それでも…。
どうしてこんなにも胸が苦しいんだろう。