世界できっと、キミだけが
「でも、私と話したかったっていうのは…」
「昔ね、一方的に見たことがあったんだ。それで少し興味を持ってね」
「そうなんですか」
「でも、その時とは少し印象がまた変わった」
「え?」
ドキッと胸が鳴る。
身代わりだってこと、ばれてないよね。
「僕は、今の幸子さんの方がいいけどね」
「そ、そうですか…?」
調子が狂う。
竜みたいに悪態をついてくれたら言い返すことができるのに。
こんな風に甘い言葉をかけられることには慣れてなさすぎて対応に困る。
「あの、今大学生だって」
「うん。幸子さんも大学に通っているんだよね?」
「あ、はい。将来は、会社を継がれるんですか?」
「このまま順調にいけばね」
そっか。
跡取りの御曹司なんだもんね。
なんだか少しだけ羨ましく思う。
目標がはっきりしている。
私は、ずっとただお父さんを楽させてあげたいから高校を出たら働きたいって、それだけの理由で就職を選んでた。