世界できっと、キミだけが
「ちょ…」
未成年にお酒なんて。
思わずそう口について出ようとした。
違う。
問題なんてない。
だって今彼女は、宇都木幸子としてここにいるのだから。
「あの、彼女はお酒だと知って口にしたんですか?」
「…あれ、そう言えば言ってなかったかな。でも、このグラスを見ればわかると思うけど」
地面に置かれたグラス。
それは細長いワイングラス。
「ご迷惑をおかけしました」
「ん。運んでくれるのかい。じゃあ、頼んだよ」
男の腕の中から小野田紗千を奪い返し、抱き上げる。
「彼女を叱らないであげてね」
「…はい?」
抱上げそうそうに去ろうとした背中に、男が声をかける。
俺は一瞬ためらったが立ち止まり振り返った。