世界できっと、キミだけが


「それで、話ってなんだ」



部屋に戻り、椅子を二つ用意して向かい合って座る。
竜は最初遠慮していたけど、話が長くなるからと無理やり座らせた。



「教えてほしいの。竜が幸子お嬢様が特別だっていう理由とか。…竜のお父さんの事」



私は、幸子お嬢様に対する特別な想いっていうのは、好きとか護りたいって気持ちだと思ってた。
竜を見ていて感じるのはそういう類の感情。
それが恋愛のそれなのか、また違ったものなのかまではわからないけれど。

でも、吉沢さんの話が本当だったら。
その特別な感情は、いいものではなかったってことだ。
恨みとか、憎しみとか。
もっと他の禍々しい感情なのかもしれない。


理由がわかったら、その感情の種類もおのずとわかることだと思う。
だったら聞くしかないよね。



「…そんな事、お前に話す必要はない」

「そうだけど。知りたいの。お願い」



私は真剣にそう言った。
真っ直ぐ竜を見据え、目をそらさずに。



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