世界できっと、キミだけが
「竜っ!竜っ!…お父さんがっ…!」
それは、突然だった。
いつものように、無関心に送り出した。
その仕事から、父は帰ってこなかった。
「警護対象を護って亡くなったんでしょう?」
「かわいそうよね…。妻も子供ものこして…」
「でも、妻も子供いて、どうしてそんな危険な仕事を続けていたのかしら」
「そうよねぇ」
悲しいとか、辛いとか、感情は一つも動かなかった。
それが、自分が父を諦めた結果なのかと。
それが無性に虚しかった。
父は人を護って死んだ。
きっと、本望だったと思う。
人は、口々に好き勝手言うけれど。
「仕方ない」
そう思える程度には、父親の仕事を認めていたのかもしれない。